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黒後家蜘蛛の会贋作集日誌(20) 東は東

GoShuです。

ほぼ2日ぶりで申し訳ございません。

なにもしていないわけではなく、裏ではちょろちょろと動いているのですけれど、まだあまり発表できることがありません。申し訳ありません。

というわけで、今日はよしなしごととして、作家による『黒後家蜘蛛の会』パスティーシュ作品についてご紹介したいと思います。

たぶん黒後家パスティーシュの中でも一番の有名どころである、

ジョン・ディクスン・カーを読んだ男(ウィリアム・ブリテン)

所載、『アイザック・アシモフを読んだ男たち』です。

この『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』はパスティーシュ短編集であり、カー、ドイル、チェスタートン、クイーン、などの愛読者が、原作の名探偵のスタイルをまねて謎を解くという作品を集めています。

パスティーシュと言ってもいろいろな形式があります。

本企画のサンプルにありますように、原作の登場人物を描写するものもありますが、そのようなものばかりではありません。

上記のとおり、本作は『黒後家蜘蛛の会』好きの街のおじさんたちが謎を解く、というものです。

原作風に言うとこんな感じ。本家より庶民的な面々です。

ポール・ハスキル……歴史教師

ジャスパー・ツィマーマン……架線工事人

ゲイブリエル・ドゥーン……鍛冶屋

シドニー・ウォーリック……銀行頭取

フィンドレー……<メリー・ティンカー亭>(たぶん宿屋)主人

彼らが解こうとする謎が、地元のデパートが出した懸賞。

5組の数字が金庫を開ける鍵になっていて、その金庫を開けたものには賞金を出す、という広告が出ました。

その数字を当てようと上記のメンバーが知恵を絞るというものです。

ちょっと話がそれますが、『黒後家蜘蛛の会』の、ミステリとしての世評としては、「安楽椅子探偵物」とともに、「多重解決物」という定義がなされていることが多いようです。つまり、謎に対して複数の解決が提示されるという形式です。

実際はそうでないものもあるのですが、表題の『東は東』などは代表的な多重解決物になっています。地理や歴史の知識をふんだんに使って甲論乙駁しているのは、たしかに「らしい」感じがします。

この『アイザック・アシモフを読んだ男たち』も、正統的な多重解決物になっています。

デパートのディスプレイにある不自然なところなどから、上記のメンバーがそれぞれもっともらしい解決を提示します。

最後に解決するのは、もちろん宿屋の主人であるフィンドレー。

しかしヘンリーとは少し違った性格の持ち主なので、ラストもそのあたりにニヤリとさせられます。

この『アイザック・アシモフを読んだ男たち』を含めて、『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』所載の小説はフェアなものがほとんどです。

(収録作『エラリー・クイーンを読んだ男』には、もちろんというか、読者への挑戦もあります)

その意味でも楽しめる一編であり、一冊となっています。

機会があればご一読をお勧めいたします。

(『アイザック・アシモフを読んだ男たち』もお勧めですが、個人的には表題作『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』が一番お勧めだったりしますが)

なお、この『アイザック・アシモフを読んだ男たち』は、第6集『The Return of the Black Widowers』にも収載されています。

優れた作品という証明でもあるでしょうね。

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コメント

こんにちは、nullです。
『アイザック・アシモフを読んだ男たち』は読めていないのですが、表題作『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』(他のアンソロジーに入っていたもの)を読みました。
結末の見事さに、うなってしまいました!
どうしてあんなにリアリティが出てるんでしょうね?
あの内容を要約してしまうと、たぶん20文字以内くらいになっちゃうと思うのですが、結末に至るまでを過不足なく丁寧に書いているのが、最後に効いてくるのでしょうか。
文章を「足せない・引けない」、とっても完成度の高い作品だなあと思いました。
オススメありがとうございました!
(『アイザック・アシモフを読んだ男たち』もなんとかして読みたいと思います♪(黒後家の6作目、和訳が出ますように…。))

投稿: null | 2010/03/29 18:58

>null様

こちらでははじめまして。いつもお世話になってます。

『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』、いくつか他のアンソロジーにも入っているようですね。
そこはかとなく悲哀が感じられないこともないナンセンスなラスト、評価が高いのでしょう。


20文字要約はさすがに難しいんじゃないですか(笑)
いや、できるか(笑)


『アイザック・アシモフを読んだ男たち』を早くお読みになれる日が来ることをお祈りしております。
最後、フィンドレーが話し始める前に考えれば謎は解ける作品です。ちょっと骨がありますけどね。よろしければご挑戦ください。

投稿: GoShu | 2010/03/29 22:49

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