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『贋作館事件』

GoShuです。

以前、パスティーシュ小説集『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』をご紹介いたしました。

本日はその続きとして、二つ目の黒後家関連パスティーシュ小説集『贋作館事件』をご紹介したいと思います。

これも先の『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』と同様、有名ミステリのパスティーシュ集です。

違うのは、

・原作の登場人物が出てくること。

・各作品が違う作者によって書かれていること。

といったあたりかと思います。

また、この本、ちょっと凝った作りになっていて、最初の9篇が普通のパスティーシュ。

そして、最後の1篇が、それまでの9篇のパスティーシュになっているのです。パスティーシュのパスティーシュですね。この最後の1篇は、9本のショートショートで構成されています。

ですから、各原作には、贋作正編(変な表現ですが)と、贋作の贋作の2作が収載されているわけです。

原作はミス・マープル、ブラウン神父、ホームズ、ルパン、明智小五郎、『黒死館殺人事件』、顎十郎、退職刑事といったところです。

贋作者は編者でもある芦辺拓、二階堂黎人、この間物故なさった北森鴻といった方々。

最後の1篇の作者は、ミステリ作家斎藤肇氏。星新一のショートショートコンテスト出身者なので、ショートショートはお手のものですね。

(なつかしいなあ、星新一のショートショートコンテスト。斎藤さんの受賞作『奇数』は、ほぼリアルタイムで読んでました。トシがばれますねえ)

で、『黒後家蜘蛛の会』贋作正編の作者は、これも斎藤さんなのです。つまり、『黒後家蜘蛛の会』だけは、贋作正編、贋作の贋作、双方斎藤さんが書かれているというわけです。

贋作正編のタイトルが『ありえざる客』。

贋作の贋作のタイトルが『ありふれた客』となっています。

贋作の贋作が短いのは当然として、贋作正編もかなり短いです。ちょっとあっさりしてるな、という気がします。

贋作正編は、ゲストになんと作者アシモフが招待される、という趣向です。ぎこちない空気が流れるその先は……

贋作の贋作は、『黒後家蜘蛛の会』の構成を究極まで単純化した、という作品です。

これまた、機会があればご一読ください。

作中で、黒後家贋作以外でのお勧めは江戸川乱歩贋作の『黄昏の怪人たち」でしょうか。乱歩の少年物の語り口が再現されていて、大変面白かったです。

いずれにしても、各作家さんが、原作を好きだというのがどの作品を見ても伝わってきて、それが一番いいところだと思います。

パスティーシュの命は、案外そこなのかもしれません。

……案外、でもないのかな。

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コメント

こんにちは、nullです。
『贋作館事件』、読みました!
本を手にして、まっしぐらに「ありふれた客」を読んで、感動しました。
そのあと、先頭から順に読んでいったのですが、贋作の贋作、の構成が、とても面白いですね。
この構成は、初めから読んでいかないと、面白味がわからなかったなぁ、と思いました。
GoShuさんオススメの「黄昏の怪人たち」も素敵でしたが、末尾の我田引水的なところがちょっとズルイです。
芦部さんの作品は未読なので、つい、図書館に予約を入れてしまいました(笑)
私が一番好きなのは、「ルパンの慈善」でした。
冒頭の、ガニマールをおびき入れる手口のクラシックさに、ポプラ文庫の正編を思いだしてノスタルジーに浸り、また、結末へのもっていきかたから、ロマンチックな気持ちになれました。

投稿: null | 2010/03/29 18:59

>null様

>GoShuさんオススメの「黄昏の怪人たち」も素敵でしたが、末尾の我田引水的なところがちょっとズルイです。

ふふふ、たしかにそうですね。

似たようなことが、我孫子武丸さんのある短編にあったことを思い出しました。ネタバレになるので題名が言えないのですけど。


私は実はルパンはあまり読んだことがないのですよねー。
不勉強です。


ポプラ社刊のものも、何冊か読んだのですが全部忘れてしまっています。

わずかに、『水晶の栓』で、ルパンとドーブレックが対峙する場面だけが頭に焼き付いているくらいです。これは東京創元社版です。

『ルパンの慈善』は読んでみますね。

投稿: GoShu | 2010/03/29 22:57

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